緑内障は早期発見が大切です
視神経乳頭陥凹拡大といわれたら
健康診断などで「視神経乳頭陥凹拡大」と指摘されることがあります。撮影された眼底写真に、緑内障性の視神経変化の可能性があると判定されたということです。緑内障は多くは発見時に自覚症状がありません。したがって、健診でのこのような指摘は、緑内障の早期発見のチャンスであるともいえます。
緑内障か否かの判定に必要な検査
視野検査及び眼底検査
緑内障では視神経の障害とそれに対応する視野の異常がみられます。したがって、判定にはまず眼底検査と視野検査を行います。
眼底検査は通常、瞳孔を広げて行います。眼底カメラでも記録しますが、最終的には、細隙灯顕微鏡を用いて眼科医が視神経乳頭を立体的に詳細に観察し、緑内障性視神経症の特徴を有するかどうかを判定します。
視野検査は当院では通常、ハンフリー視野計を用いて定量的な評価を行います。ただ、この検査は初めてでは難しいことがあり、一回目の検査結果が信頼性に乏しい場合、日をおいて再検査を行います。
ハンフリー視野検査には主に2種類あり、通常は中心の30度の範囲を検査する「24-2」が用いられますが、中心部の10度の範囲を詳細に調べる場合、「10-2」というメニューで行います。
実際の症例を示します。
眼底写真では、視神経の上方と下方の両方に、赤丸で囲んだ部分に神経線維層欠損という、神経が薄くなり色調が暗く変化している部分があります。24-2視野検査では、上下視野にいずれも視野欠損があります。10-2視野で詳しく中心視野を検査すると、視野欠損は中心部まで及んでいることがわかります。
隅角検査
細隙灯顕微鏡下で隅角レンズを目の上に当て、隅角が開いているか、閉じているかを観察し、開放隅角緑内障か閉塞隅角緑内障かを判定します。
OCT(光干渉断層計)
OCTは比較的新しく開発された機器ですが、今では緑内障診断に欠かせないものとなっています。OCTによって視神経周囲の神経線維層の厚みと黄斑周囲の神経節細胞層の厚みを測定します。OCTを使用することで、先述の眼科医による眼底検査を補完し、より早期の緑内障の発見を期待しています。
これは、先に挙げた症例のOCT画像です。「黄斑部」と「視神経周囲」の両方で、神経の障害によって神経が薄くなっているのが検出されています。
眼圧検査と角膜厚測定
非接触型の眼圧計では誤差が大きいため、緑内障を疑われた場合は、接触型のゴールドマン眼圧計を用いて精密な眼圧を測定します。その際、角膜の厚みを測定することが必須です。角膜中央部の厚みは530~550ミクロンといわれており、その厚みをもとに眼圧計は設計されているため、これより角膜の分厚い方では眼圧は高く測定され、角膜の薄い方では眼圧は低く測定されます。したがって、角膜の厚みをもとに眼圧を補正することが必要となります。
緑内障診断へ
これらの検査を総合的に判断し、緑内障の有無を診断します。現時点では緑内障ではないが、将来的に緑内障になる可能性のある症例、たとえば眼圧が高めの高眼圧症や近視が強い方、ご家族に緑内障の方が多い場合などは1年~2年に一度来院していただき、検査を行っています。
経過観察
経過観察では、視野検査を定期的に行います。上に述べた24-2視野と10-2視野検査を行いながら、時間とともに悪化していないかどうかを判断します。
OCTを用いると、神経線維層の厚みなどを経時的にみることができますので、進行しているかどうかの判定にも有用です。
右眼 | 左眼 |
このようにOCTでは網膜~視神経の構造変化を見ることができ、非常に有用ですが、問題点として、偽陽性、つまり正常の方でも異常値が出やすいという点で注意が必要です。特に近視が強い方などはその傾向があります。したがって、緑内障か否かの判定は、上にあげたような眼底所見、視野検査結果、OCT等の結果などを総合的に判断する必要があります。緑内障かどうかはっきりしない場合も多く、そういったケースでは定期的な視野検査が重要となります。
緑内障の点眼
緑内障に対しては多くの場合、まず点眼薬で治療を開始します。いろいろな種類の緑内障点眼薬がありますが、効果、副作用などを考慮しながら最適な点眼薬を選択する必要があります。一種類では効果不十分の場合は複数を組み合わせて使います。
緑内障の手術(含レーザー治療)
点眼薬では効果が不十分な場合には、手術が必要となります。手術には、線維柱帯切開術、線維柱帯切除術などの種類があります。近年では「選択的線維柱帯形成術(SLT)」などの新しいレーザー手術も開発され、注目されています。SLTは従来のレーザーと異なり、線維柱帯の色素細胞のみを選択的に標的とするため、周囲の正常組織への影響がほとんどないとされ、繰り返しの治療も可能です。当院でもSLT用レーザー装置を早速導入し(右図)、点眼薬などで効果不十分な緑内障に対して治療を行っています。