角膜の病気 ドライアイなど
ドライアイ
2016年に改訂されたドライアイの定義と診断基準によると、
定義:様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある
診断基準:眼不快感、視機能異常などの自覚症状があり、かつ涙液層破壊時間(BUTといいます)が5秒以下のものをドライアイとする
となっております。
症状としては、
- 目が乾く
- 痛い、ゴロゴロする
- 疲れる
- 眼が明けにくい
- 眼のかすみ
など多岐にわたります。
ドライアイは、涙液分泌減少型と涙液層安定性低下型に分類されます。診療においては、問診から症状を確認したのちに、フルオレセインという色素で涙液を可視化して、涙液層の安定性や角膜についた傷を確認します。治療としては、ヒアルロン酸ナトリウム、ジクアホソルナトリウム、レバミピド、人工涙液などを組み合わせて処方します。
涙点プラグ
点眼治療で改善が見られない重症のドライアイに対しては、涙点プラグを挿入します。この治療は、シリコン製のプラグで上下の涙点を閉鎖することで、目から鼻への涙液の排出経路を閉ざし、目に涙液の貯留を図る治療です。所要時間は5分程度です。
VDT症候群、眼精疲労
VDTとはスマホ、パソコンの画面など、visual display terminalsの総称です。画面を見ることにより、持続的なピント調節が必要となることで、目の疲れ、肩こりなど疲労症状が現れます。また、VDT作業中は画面を注視するため、瞬きが減少し、目が乾燥することで、上記のようなドライアイの症状も出てきます。治療としては、ピント調節を補助するような近用メガネの処方や、ドライアイに対する点眼治療などを行います。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、涙液を分泌する涙腺と唾液を分泌する唾液腺に対する自己抗体がこれらの組織を攻撃するため、涙液や唾液の減少を起こします。関節リウマチなどの膠原病を伴うことがあります。
眼の症状としては、涙腺の機能が低下するために、涙液減少性のドライアイをきたします。診療においては、シルマー試験を行って涙液分泌が5mm/5分以下であるか、またフルオレセイン染色で乾性角結膜炎を認めるかを判定し、厚生省研究班による診断基準のうち眼科部分を満たすかどうか、を判断します。治療としては、涙液減少を補うために人工涙液やヒアルロン酸ナトリウムの点眼を行い、重症例では涙点プラグの使用を考慮します。
円錐角膜
角膜の中央部から下方が薄くなって前方に突出し、角膜形状の異常を呈する病気です。思春期に発症し、通常40歳くらいで進行停止します。
症状
10〜20歳くらいで角膜の変形に従って乱視が増加して発症する事が多いです。診断は細隙灯顕微鏡での診察以外に、角膜トポグラフィーでの角膜形状解析が軽度の症例の検出に有効です。この症例では、下方の角膜に存在する不正乱視が、赤く表示されています。
進行とともに、メガネでの視力矯正が困難となり、ハードコンタクトレンズによる矯正が必要になります。この写真では、角膜の突出した部分がハードコンタクトレンズの内面に接触し、その周囲に涙液の貯留が見られます。
さらに進行すると、角膜移植が行われる場合があります。
また、急性角膜水腫といって、経過中に急性の角膜の腫れを生じる事があります。この場合は、点眼などで対処します。
なお、円錐角膜眼にレーシックを行うと、術後徐々に角膜が前方に突出してくる、角膜拡張症を起こしますので、円錐角膜眼にはレーシック手術は禁忌となっております。
治療
ハードコンタクトレンズでの矯正が基本となります。通常のコンタクトに加えて、円錐角膜用の特殊なコンタクトレンズもあります。
コンタクトレンズ矯正ができない症例には、角膜移植などを検討します。